立川TMOに対する基本的考え方

「立川TMO構想」は、以下の5項目を基本的考え方としている。

  1. 中心市街地を「地区の戦略拠点」であると同時に、広域商圏を考えた場合の「地域の戦略拠点」にする。

    現在の中心市街地活性化法が「地区」の概念から活性化を促進していることの限界もある。商圏を構成する「地域のポテンシャル」を上げ、ひいては商圏の実質的な購買力を上げる方策についての戦略無しには、中心市街地の空間的広がりも実質的効力を持たない。したがって、立川が多摩地域のフロントランナーとして、他地域に先駆けて多摩地域全体の活性化をする機能を持つことが必要である。そのためには、地域の戦略拠点になるべく、多摩地域にある人的物的知的資源を効果的に活用することからTMO活動の実践を開始することが望まれる。

  2. 中心市街地活性化法を単なる「地域商業活性化策」に矮小化してはならない。あくまでも、「まちづくり」を実現することで、派生的に「商業振興」が達成されるという基本的視点から中心市街地活性化法を捉えて、活用する

    従来から多くの商店街振興策は、商店街の衰退に対して「対症・局所」療法に留まっていた。大型店舗に対する対立図式からの出店規制や、商店街のアーケード設置、カラー舗装などのハード充実はその典型である。結果として集客力の低下やモータリゼーションに対する対策の遅れを生んだ。ところで、モータリゼーションの進展で激化する都市間競争での勝ち残りは、単に「売り場面積の合計」で決まるわけではない。効果的なテナントコーディネーションや情報発信、アクセスの向上などの総合力で決まってくる。この総合力を向上させるための戦略の構築と実現への原動力(戦略的エンジン)としてTMOを位置付けなければならない。

  3. TMOを多様な利益関心を持つ人達の「話し合いと活動の場(フォーラム)」として準備する。 

    多様な利益関心を持つ人達は、別の側面から見ると利益に裏打ちされた様々な資源を持つ。この人達を「まちづくりの価値連鎖(バリューチェーン)」の実現のために統合しなければならない。それには、広く「合意(コンセンサス)」を形成する必要がある。そのために対面コミュニケーションとITを使ったネットワークコミュニケーション、双方の活用を図らなければならない。その仕組みづくりの役割をTMOが担う必要がある。
    したがって、TMOが企画し実施する活動は「すべて合意形成事業」として位置づけする必要がある。全国の商店街のIT推進事業を調査した結果によれば、IT推進事業イコール商店街振興策と短絡的な取り組み方をしている商店街があまりにも多い。この期待図式は早晩実態とかけ離れたものという結論が下されよう。あくまでも、情報共有手段としてしかITを使ったネットワークコミュニケーションは機能しえない。また、対面コミュニケーションの無い情報共有などは成立しえない。ITは「安価」な内部にとって情報共有、外部にとって情報発信と情報収集の手段として活用すべきものであり、過剰な期待感や投資はIT活用にとって失敗を用意する。

  4. TMOは2層型の組織構造にする。エキスパートとアマチュア・ボランティアの効果的な混成で組織の活性化と多様化を進める。

    「まちづくり戦略会議」、「TMO」、各種「ワーキンググループ」などTMO関連の組織はすべてエキスパートとアマチュアの2層型の組織構造でなければならない。エキスパートは事象を深く掘り下げ分析し、必要なプロジェクトを理論的にマネジメントできるが、狭義の専門性に傾きやすい。他方、アマチュア・ボランティアは寄り集まることで多方面から多角的な視点を提供できるが、断片的かつ経験則的な思考や行動パターンに陥りやすい。この2層の効果的な融合から活動の活性化と広がりが出てくる。エキスパートのいない組織は漂流する。だから組織は予測のつかない変質を生じ、やがては瓦解する。だからエキスパートの存在は不可欠だ。しかし、エキスパートの選択や意思決定に対してアマチュア・ボランティアからの不断のチェックアンドバランスが無ければ、独断と偏見が支配し、組織活動は現状から遊離したものとなる。TMOとその関連する組織は、実効性と成果の観点から常にテストされ、それに合格しなければ「サンセット方式」で存続の可否まで検討されなければならない。虚偽と惰性に陥ることのないように、組織の活性化を常に心がける必要がある。 

  5. TMOを主導する役目は、立川市と立川商工会議所が「車の両輪」となって果たしていく。TMOの目的は、品格と風格のある立川を創造することである。それは「車の両輪」が上手く機能しなければ実現できない。 

     立川を名実ともに多摩地域のフロントランナー都市として位置づけることが可能なのだから、その実現に向けて行政と民間のパートナーシップを存分に活用しなければならない。「都市は未完成の別名である」から、都市は常に変貌を遂げてゆく。だから、つねに「立川市中心市街地活性化基本計画」は実情にあわせて改訂を繰り返していかなければならない。また、この基本計画のローリングにあわせてTMO構想も新しいライフスタイルを立川から提案できるようにローリングしなければならない。とすれば、立川市と立川商工会議所の間の意思疎通や情報共有は、TMO活動にとって「基本的条件設定事項」と捉えなければならない。また、市の進める事業とTMO活動との整合性は、「まちづくり事業」の実効性を高めるためには常に考慮すべき基本事項でもある。TMOに関わるすべての事項を立川商工会議所単独の事業という「狭い定義」でくくることなく、常に立川市と立川商工会議所が「車の両輪」としての役割を自覚し、相互に確認する作業を続けていかなければならない。